配偶者控除の拡大よりも基礎控除額の増額を

このブログで度々紹介している中央大学名誉教授(日本租税理論学会理事)の富岡幸雄さんの著書『税金を払わない巨大企業』(文春文庫)を読んでいたら、第8章・崩壊した法人税制を立て直せ!の中で、(2014年頃)安倍首相が進めようとしていた配偶者控除の廃止を批判している。
配偶者控除というのは、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合、一定の金額の所得控除が受けられる制度のこと。例えば、夫が会社員で妻がパートの場合は、妻の年収が103万円以下であれば、夫の課税所得から38万円が差し引かれる。妻は給与控除が65万円あり、さらに基礎控除が最大38万円あるので、合計額の103万円以下の年収であれば、課税所得はゼロになる。
富岡幸雄さんは、次のように述べている。

私が気になっているのは、安倍首相が「女性の就労を後押しするため」という表向きの理由で推し進めようとしている配偶者控除の撤廃です。この配偶者控除を撤廃して、年収103万円以下の人にも課税しようとしているのです。
もし、この配偶者控除が本当に女性就労のハードルになっているとしたら、逆に配偶者控除額を引き上げる方が女性就労の推進力になるでしょう。それを「女性就労を後押しする」という本末転倒のもっともらしい理屈をつけるところが、為政者の詭弁です。


全くその通り、同感です。なのだが、その後どうなったかというと、政府与党は2017年度税制改正で、配偶者控除について「控除適用の上限を年収103万円から150万円に拡大する方針だ」となり、廃止から一転して拡大へ転換するようだ。(これは2018年1~12月分から適用になる模様)。

しかし一方で、昨年10月から働く女性は社会保険に加入する義務が生じるようになった。適用対象が拡大され、一定条件のもとで月収8.8万円を超えると社会保険加入の対象となるのだ。年収ベースでは106万円である。
実はパートをしている私の妻が、これに該当してしまったのである。月11万ほどの給料が社会保険料・厚生年金を引かれると手取り約9万円ほどに減る。社会保険、厚生年金も長い目で見るとメリットはあるのだが、どうも「働き損」になっているような気がしてならないのだ。
今回の配偶者控除の拡大について、伊藤佳江・全国女性税理士連盟会長は「それは小手先の見直しにすぎない。真の解決からはかえって遠のくのではないか。育児や介護の社会化が進まない現状で、配偶者控除は、外では低賃金で働き、家庭では家事や育児、介護の担い手としての位置に女性を押しこめるような仕組みだ。政府が進める女性の活躍に逆行する恐れがある。引き続き廃止を求め続けていく」と批判している。
なるほど、伊藤さんの言うことが正しいように思える。伊藤さんはさらにこういう提案をしている。それは「配偶者控除の廃止とともに、私たちは基礎控除の増額も要求している。現行の控除額38万円を、最低生活扶助基準額の100万円程度まで引き上げるべきだ」という。これには私も大賛成である。